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宇野千代の人生と文学
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■ 最後の著作
平成7年12月、海竜社から『私何だか死なないような気がするんですよ』が刊行された。千代の生前最後の単行本である。
私は、平成7年の11月28日に満で98歳の誕生日を迎えることになりました。年が明けますと、昔風の数え年でいいますと百歳になるというわけです。明治、大正、昭和、そして平成。長生きといわれる人生を歩いてきたわけです。私は昔から何でも自慢の種にする癖があるのですが、これでまた一つ自慢がふえたというわけです。そうです。長生き自慢です──がその書き出しである。そしてその「あとがき」に──私は、これからも長生きし、そして21世紀を見たいと念じているのです──と綴った。
集英社文庫(平11・6)の藤江淳子の「解説」によると、題名は単行本のために特別に考えたのではなく、95歳の千代がふと思いついて、その時の心境を次のように色紙にしたためたものだという。
この頃
思うんですけどね
何だか
私
死なないやうな
気がするんですよ
はははは は
宇野千代
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