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宇野千代の人生と文学

■ 『色ざんげ』

 千代の初期の代表作に『色ざんげ』がある。「中央公論」の昭和8年9月号から連載が始まり、翌年の2月号、9月号を経て10年3月号で完結し、同年4月、中央公論社から鈴木信太郎の装幀で刊行された。千代の遅筆を示す一作品でもあった。『色ざんげ』は──或る巴里帰りの若い画家の情死事件を、その男の話として書いたものである。その画家は東郷青児。その青児と五・六年の間、一緒に暮していた私は、その話をたまに青児から聞くことがあって、それをもとに、自分流に一つの物語にした(『宇野千代全集・第三巻』「あとがき」)──ものである。河盛好蔵は──読者は、恋愛小説の一つの古典を読んだときのような感銘を与えられるであろう(新潮文庫「解説」)──と評した。
 『色ざんげ』のほか、千代が東郷青児を描いた作品に『未練』(昭11)、『この白粉入れ』(昭42)、『或る男の断面』(昭49)などがある。




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