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宇野千代の人生と文学

■ 故郷に錦を飾る

 大正11年(1922)4月12日、北海道から上京して「中央公論」5月号掲載の『墓を発く』の原稿料366円を手にした千代は、その日のうちに東京を発ち、翌日の夕方、岩国へ着いた。電報を受けて出迎えに来ていた異母弟妹たちと晴れやかに人力車を列ね、大明小路を抜け、半月庵の前を通り、錦帯橋を右に見て、土堤から臥龍橋を渡って川西の生家への道を辿った。
 「お母(かか)、そいじゃ行くけえの」「風邪をお引きなよ」と別れの言葉を交わし、人目を避けて新港から船で発って以来六年振りの、大金を手にしての「錦を飾る」帰郷であった。




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