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宇野千代の人生と文学
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■ 小さなお母さん
宇野千代の継母リュウは四男一女をもうけた。千代の異母弟妹となる薫、鴻(ひろし)、勝子、光雄、文雄である。
私の第二の母は・・・私と実子との間に、誰の眼にも分かる間隔を、はっきり置いていた・・・一番旨(うま)いものを食べ、一番さきに風呂へもはいった・・・昔から芝居や浄瑠璃に語られている継母子の物語とは、全く反対の現象である。
(『幸福を知る才能』昭57・8海竜社)
千代はその継母の愛情に応えて、異母弟妹にとっての「小さなお母さん」役を果たした。
5人の弟妹を一人一人おんぶしてはお守をした。 あ、温いな、と思うと、背中がぬうっとあったかくなって、またぺたっと冷たくなる。考えて見ると私の小さい背中は、おしっこの乾く間がなかった。おかしなことだけれど私は自分のことを、小さいお母さんになったような心持でいる。(『私のお化粧人生史』昭30・11中央公論社)
後年、東京・馬込で千代と親交があった作家の廣津和郎は「あなたは弟妹たちを男の惣領のようによく面倒を見る。仲よくしているのを見るとほほえましい」と言ったという。
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